予測市場の確率が示すAI半導体「次の波」|東京エレクトロン・ディスコに勝機
AIブームの恩恵はエヌビディアだけではない。予測市場の確率データを読むと、製造装置・素材・パッケージングという「川中・川下」に次の波が来る可能性が浮かび上がる。東京エレクトロンやディスコを軸に、世界が今どこに賭けているかを解説する。
「エヌビディアの次」を探すなら、まず川の流れを見る
AI半導体バブルと呼ばれるほど注目を集めたエヌビディア株は、2023年から2024年にかけて世界の個人投資家を熱狂させました。しかし予測市場——ここでは「世界中の投資家・専門家がお金を賭けて確率を形成するオンライン市場」のこと——が今、静かに注目し始めているのは、その「一段後ろ」にいるプレイヤーたちです。
半導体産業は川上から川下まで大きく三層に分かれます。
- 川上(設計):エヌビディア、AMD、インテルなど。チップを設計する
- 川中(製造装置・素材):ASML、東京エレクトロン、ディスコなど。チップを作る機械や材料を供給する
- 川下(製造・パッケージング):TSMC、サムスン、キオクシアなど。実際にチップを量産する
川上が注目を浴びている間、川中・川下は「縁の下の力持ち」として地味に見えがちです。しかし予測市場のデータを読むと、2025年後半から2026年にかけて、この川中・川下に資金と関心が移動しつつある兆候が見えてきます。
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予測市場は今、何と言っているか
PolymarketやKalshi(いずれも海外の予測市場プラットフォーム)では、AI・半導体関連の需要予測に関する設問がいくつか立てられています。以下はその一部です(2025年6月時点の概算値)。
| 設問 | 市場確率(概算) |
|------|------------------|
| 2025年中にエヌビディアのデータセンター向け売上が前年比50%超成長 | 約62% |
| 2026年までにHBM(高帯域幅メモリ)の供給不足が継続 | 約41% |
| ASML、2025年EUV装置の出荷が年間100台超え | 約34% |
| 2026年までに先端パッケージング(CoWoS等)の需給がタイト化 | 約58% |
注目してほしいのは、「エヌビディアの成長」より「パッケージングの需給逼迫」の確率が低い点です。
つまり市場は「AIチップの需要は続く」と読みながら、「それを作る工程のボトルネックはまだ完全には解消されない」と見ている、という構図です。
これは投資家にとって重要な示唆を持ちます。需要の恩恵は、必ずしも「有名な設計企業」だけでなく、「工程上のボトルネックを握るプレイヤー」にも分配される可能性があるということです。
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「先端パッケージング」とは何か——CoWoSを一言で理解する
少し専門的になりますが、ここは読み飛ばさないでください。なぜなら、この用語こそが「次の波」を読む鍵だからです。
CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)とは、複数のチップを一枚の基板の上に横に並べて、超高速の配線でつなぐ技術です。エヌビディアのAI向けGPUは、このCoWoSを使わないと製品として成立しません。
そしてこのCoWoS工程を担うのが主にTSMCであり、CoWoS専用装置を供給するのがディスコ(6146) や 東京エレクトロン(8035) といった日本企業です。
予測市場が「先端パッケージングの需給がタイト化する確率が約58%」と示しているということは、逆に言えば「この工程を握る装置メーカーへの注文が増える可能性が過半数を超えている」とも読めます。
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日本の投資家にとって「自分ごと」になる理由
ここで少し立ち止まって、日本人の生活に引き寄せて考えてみましょう。
電気代と半導体は実はつながっています。 AIデータセンターの電力消費が増えれば、電力需要が上がり、エネルギーコストが上昇し、それが電気代や製造コストを通じて家計にも影響します。この連鎖の中に、半導体製造装置という「インフラのインフラ」が存在します。
また新NISAで成長投資枠を活用している方にとっても、日本の製造装置メーカーは国内上場銘柄であり、為替リスクを抑えながらAIテーマに乗れる選択肢の一つとして語られることがあります(ただし投資判断はご自身でお願いします)。
さらに言えば、円安局面では海外売上比率が高い製造装置メーカーは為替追い風を受けやすいという構造的な特徴もあります。予測市場で「ドル円が150円台を維持する確率」が一定水準で推移している現状を踏まえると、この視点はより現実感を帯びます。
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「意外な確率」をどう読むか——34%という数字の意味
ASMLのEUV装置出荷が年間100台を超える確率が約34%というのは、直感的に「低い」と感じる人が多いかもしれません。
しかしこれは「ASMLが失速する」という意味ではありません。市場は「100台超えは簡単ではない」と見ているだけであり、仮にそれが実現した場合のインパクトは非常に大きいと言えます。
予測市場の醍醐味は、「低い確率で起きることが起きたとき、世界が驚く」という非対称性を事前に把握できることです。34%という確率は「ほぼ起きない」ではなく「3回に1回は起きる」水準です。これをどう受け取るかが、投資家としての目利きを磨くトレーニングになります。
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サプライチェーンの「ボトルネック地図」を頭に入れる
以下の構造を頭に入れておくと、今後のニュースが格段に読みやすくなります。
```
AI需要爆発
↓
エヌビディア・AMDがGPU設計 → 設計は好調
↓
TSMCが先端プロセスで製造 → 製造能力がボトルネック
↓
CoWoS等でパッケージング → 装置・材料がボトルネック ★ここ
↓
HBMメモリを積層 → SK・マイクロン・キオクシアが供給
↓
データセンターに納品 → 電力インフラが次のボトルネック
```
予測市場は今、この「★ここ」の部分——先端パッケージングと、それを支える装置・素材——への関心が高まりつつある段階にあります。
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Aha. の視点:世界は「見えにくい部品」に賭け始めている
予測市場が教えてくれる最も大切なことは、「みんなが知っているものの次にくるもの」です。エヌビディアが有名になりすぎた今、世界のスマートマネーが静かに動いているのは、その陰で工程を支える装置・材料・パッケージング領域かもしれません。
キオクシアが「次の大化け」として注目されたのも、HBMという「地味だが不可欠な部品」の供給者だったからです。次のキオクシアを探すなら、サプライチェーンの地図を持ち、予測市場の確率変化を追い続けることが一つの武器になります。
Aha. では引き続き、予測市場が示す確率の変化を追いながら、「世界が今どこに賭けているか」を日本の投資家の皆さんにお届けしていきます。
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*本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄・商品への投資を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任においてお願いします。*
*予測市場の確率は市場参加者の集合知であり、将来の結果を保証するものではありません。*